
水源地の丘陵
ボルヴィックの水源地は、もともと火山だった場所なので、農業には適さず、人もあまり住んでいない土地でした。しかし、今は、51パーセントがシラカバとブナを中心とした森林ではあるものの、43パーセントは牧場と耕作地、残りは住宅地になっています。そのなかに工場などは一切なく、一部は個人農家で行われている小規模な牧場と畑作地があります。そして、その一帯は科学者によって研究が行われ、水源地と水源を外れている土地に明確な線引きがされており、ボルヴィックはその水源地にかかる4つの自治体と共同で長期にわたる自然保護と環境の改善に取り組んでいます。具体的には、下水道の整備、化学肥料と農薬をできるだけ使わないようにする呼びかけ、専門家による環境の診断と変化の予測などです。また、水源地の一角には、以前の採石場の跡もありますが、ボルヴィックはこの場所も買い取り、美しい水を生み出す火山岩の地層が見られる場所として見学できるようにし、子どもたちの学びの場となっています。

バルベコ・ファミリー/酪農家
4000ヘクタールに広がるボルヴィックの水源地。このなかでの農業は、農薬を禁止するなど、とても環境に配慮して営まれています。例えば、農業ではどうしても必要となる肥料。水源地はもともと火山があった場所だけに、あまり肥沃な土地ではありません。そこで現代の農業では一般的な化学肥料を使いたいところですが、水質に無用の変化を与える恐れがあるため、農業の効率性よりも環境保護を優先し、水源地ではすべての農家が化学肥料を使用しない約束になっています。その代わりに、取り入れられているのが、オーガニックで水質に変化を与えにくい天然肥料です。農作業中に出てくる農業廃棄物を有効な資源に変え、家畜の屎尿を処理することもできるため、ボルヴィックの水源地ではもはや当たり前の施設になっています。さらに意識の高い農家では、コンポストで作り出した有機肥料ですら水源地の真上では使わず、水源地を外れた農地だけでしか使用していません。こういう動きは、これからますます広がっていくかもしれません。

「ボルヴィック」のフィルターとなる地層が露出している採石場の跡
水源を守ろうという意識がとても強くなった現在、農家には購入のための金銭的な負担がかかってしまいます。そのため、水源地では環境保護支援費を供出し、農家の手助けが行われています。その方法に面倒な手続きは必要なく、農家が購入したものの領収書を提出し、その分の代金を受け取るだけという簡単なものになりました。煩雑な手間を省き、気持ちよく農家に協力してもらえれば、なおいっそう水源地の環境保護が進みやすいという考えから生まれた方法です。こういった活動の積み重ねが、いつまでも変わらないボルヴィックの水質に結びついていくのです。

エロイーズ・オグロ/ダノンウォーターズフランス
水源保護エビアン/ボルヴィック担当
ボルヴィックの地域には、5カ所の採水地があります。そこからはまるで、泉のように水が湧き出ているイメージがあるかもしれませんが、ボルヴィックでは地下90メートルに設置したポンプから採水し、工場では空気に触れることなく直接ボトルに詰めています。その採水地に至る道には、途中で厳重なカギをかけられ、関係者以外には非公開。採水地にある建物の入り口にはセンサーが取り付けられ、内部に入っても人間が入れる場所と汲み上げのためのポンプのあいだには 壁があり、近寄ることもできません。ボトリング前の水が汚染されないよう、万全のセキュリティー体制がとられているからです。そのポンプは24時間、休まずに稼動。一定の水量をいつも汲み上げることで、岩石から溶け出すミネラル成分が常に変わらないように計算されています。こんな徹底した取り組みで守られた水は、理化学検査とともに、人間の鼻と舌を使った官能検査にかけられます。ですが、これまでに水の成分に変化が起こったことは一度もなく、風味も同一です。

採水地の入口
ナチュラルミネラルウォーターの水質を守るためには、水が浸透する「水源地」と、水が生まれる「採水地」の2つが重要です。水源地は4つの自治体にまたがり、採水地はボルヴィック市のみ。しかし、その連携には手間も費用もかかるものです。そこで水質保護を目指し、これらの地区のスムーズな連携のために 2004年に生まれたのが、環境保護団体「CEPIV」(Comite Environnement pour la Protection de l'Impluvium de l'eau de Volvic)。「ボルヴィック」も地域に根ざした企業として活動資金の2/3を出資し、設立されました。化学肥料・農薬をできるだけ使わないように呼びかけ、新しい農業政策を提案し、コンポストの購入など環境保全に役立つ行動の際には、補助金を補助。下水道の整備に努め、専門家による環境の診断と変化の予想などを定期的に行なっています。2006年にはフランス国家にも承認されました。

ボルヴィック市市長
モアン・アムムさん
(Mohand Hamoumou)
市名自体がボルヴィックであり、「ボルヴィック」の採水地を抱えるボルヴィック市にとって、最も大切なことは水資源を守ること。約50年前にはまだ市内では水が発見されておらず、ワイン造りと火山岩の採石という限られた産業しかない村だったボルヴィックにおいて、いまや市を支える質の良いおいしい水は、いちばんの財産なのです。市民にも、自然を守ろうという意識がとても強く、その象徴が昨年2月からボルヴィック市の市長を務めているモアン・アムムさん。氏の立候補時の最大のテーマは「環境保護」で、当選後はやはり水のことを第一に考え、水源や採水地を汚さない都市計画を立案し、実行しています。これから力を入れて行きたいことは、次世代を担う子どもへの環境教育。その成果が表れれば、将来にわたって、今の美しい自然とその恵みである『ボルヴィック』の水は維持されていくことでしょう。