水が開く未来への扉。

1L for 10L in Republic of Mali

Maliの子供たち

当たり前のことを叶えるために

マリの女性たちはよく働く。村々で、街中で、水を運んでいたり、洗濯していたり、杵と臼で粟の脱穀をしていたり。色彩豊かな衣装をまとった女性たちが井戸に集まる姿は、この国の過酷な現実を忘れてしまうほど華やかだ。家庭を司る彼女たちにとって、清潔で安全な水が近くにあることがどれほど大きな喜びであるかは想像に難くない。しかし、その水が、彼女たちの日常だけでなく、巡り巡って未来をも変えていく。

モプティからほど近いサンパラ村の小学校では、2008年に「1L for 10L」プログラムによる支援が始まって以来、子どもの数、特に女子生徒の数が増加。今ではなんと女子生徒の数が男子生徒の2倍だという。男の子たちに負けず、大きな声で笑い走り回る彼女たちは、成績も男の子より優秀。そんなサンパラスクールの女の子たちが私たちを歓迎して歌ってくれたのは「女性に教育を」という内容の歌だった。

「女性が学ぶのは家庭のため、村のため、そして国のため。女性の学びは社会を変える、だから女の子に教育を続けていかなくてはいけない、という歌詞なんです」

かつて、女性が教育を受けるということは考えられなかったのだ、と先生は歌の内容を熱心に解説してくれた。女性たちは家の中で、村の中で家庭を支え、子どもを産み育てる。どこへも行かない、どこへも行けない。その閉じた世界を、私は垣間見ていた。ある村では、一家の長である男性を介さないと女性と会話ができなかったため、女性にインタビューをすることすらままならなかったのだ。

「しかし、人々の意識は変わってきました。女子も教育を受ければ、教師にも医者にもなれる。教育を受けた女子が母となれば、学んだことを家庭で活かし、同じように子どもに教育を与え、子どもの将来の可能性を広げる。そうやって家庭も地域も国も発展していくのです。今この村では、女子の教育の重要性をしっかりと理解しています」

私たちは当然の権利として学校に通い、将来を夢見る。男も女も関係なく。そんな私たちの日常が、この地では当たり前ではないという事実に、この旅の中、何度ハッとさせられただろう。今この村では、清潔で安全な水を得て、生きることのその先のこと、私たちにとって当たり前のことをようやく叶え始めているのだ。

「私たちの国はギリギリのところにあります。だからこそ教育を続けていかねばなりません。変わるために」

私は井戸がもたらしたものの大きさを改めて実感し、「かけ算の支援」という言葉を理解する。かけ算の支援。それは、支援によって健康がもたらされ、健康な身体が経済活動を広げること。また、男の子にも女の子にも教育の機会が生まれ、教育が子どもたちの可能性を、そして地域の発展を広げること。雨が降れば乾いた大地にその水がぐんぐんと吸い込まれ緑を生んでいくように、「1L for 10L」プログラムで生まれた清潔で安全な水が、マリの人々の未来への扉をどんどん開いていく様を、私は目の前に見たような気がする。

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